男性向け風俗での気づき
待ち合わせ場所には携帯ストラップにたくさんのグッズをつけたいかにも今風の若い女性が立っていました。
20代前半かと思って年齢を聞くと32歳だと教えてくれました。
とてもニコニコ、はきはきした人でした。
結婚しているかどうかを聞いたところ離婚して小学生の子供がいるとのこと。
とてもお母さんをしているようには思えないほど自分自身を楽しんでいる人だなという印象でした。
その日、利用した部屋はオープンテラスがついていて、春のような暖かさだったので外に座って話を伺うことにしました。
彼女はおいしそうにタバコを吸うとそれまでの会話でのぎこちない表情から吹っ切れた表情に変わり話し出しました。
「最後に言おうと思ってたんですが、私も風俗で働いているんです」
男性向け風俗で働く人は聞いている中では彼女で2人目となります。
最初から話してもらっても全然構わないのにどうしてなのかと聞いてみると同業者だと最初に言われたらやりにくいと思ってと配慮してのことだったようです。
今の店に勤めだして1年と少しだそうですが、店では人気があるようです。
たしかに彼女の明るいキャラクターとところどころにみせる繊細さが、お客さんに受け入れられている要素のひとつだと思います。
もちろんテクニックや射精を促すまでの流れなどもスムーズなのだと思います。
今回利用された理由として彼女の向上心があげられます。
客としての立場を体験してみたいということでした。
「接客の際には感じていなくても声を無理やり出しますが、今日は出しません」
「当然ですよ。いつものようにしてくださいね」と僕は笑いながら答えました。
そんなことをわざわざ言ってくれるところも彼女の真面目さの表れなんだと思います。
今回の施術ではどちらかというと僕のほうがいろいろ話を聞いて勉強させてもらったような気がします。
男性向け風俗の場合は、目的のほとんどが射精することにあります。
利用時間は60分から90分が一番多いようです。
部屋に入ってから出るまでがその時間となりますので、信頼関係を気づくどうこうというのはとても難しいと思います。
そんな状況でもリピート客がいるというのは、その人のもつ魅力と努力しかないでしょう。
僕の場合は施術時間90分といっても最低でも3時間ぐらいは一緒に過ごしていますので、とても真似できることではありません。
それと男性向け風俗と僕との大きな違いは、お客さんにあります。
男性向けの場合はとにかくどんな人でも集客を最大化することが、目的となりますからそこにいる限りはミスマッチが必ず起こります。
外見だけではなくフィーリングがどうしても合わない客もいるはずでしょうし、プロとして顔に出さずに丁寧に接客した結果、リピートされることもあるようです。
僕の場合は、最初から間口を狭くしているので、フィーリングが合わない人が来られることはあまりありません。
男女限らず客を選べない立場で働いているのならその中で自分が接客していて楽しいと思える客だけで仕事になるようにすることが理想です。
しかし射精目的の男性がほとんどであればサービスよりも目新しさなどの刺激を求めて相手を変える人が多くなるような気がします。
経営する側がリピート客の扱いについてもっと考えるようになれば、たとえ3時間で90分の料金しかとれなくても待機時間で腹の探り合いをするような同僚とうわべだけの会話をするよりもましだと言って働く女性もいるかもしれません。
彼女はそういった同僚との関係などもいろいろ話してくださいました。
お子さんが寝たあとは何をしてるんですかとお聞きしたところ、一緒に寝ることが多いですと答えられました。
彼女にとってお子さんと一緒に寝ることが一番やすらぐ時間なのかも知れません。
どんな職業でもいろんな問題があります。
いつも能天気でポジティブ思考の極みだと思われがちの僕でも考えてしまうこともよくあります。
暗い顔をして下を向いて歩くよりも彼女のように胸を張ってニコニコしているほうが、次に起きる問題について正確な判断を下しやすいと思います。
性風俗という一見閉ざされたような世界にあっても光に向かって進もうとしている人がいることを改めて確認できるいい機会となりました。