抱きしめられて涙する訳とは
更年期を意識されるようになった女性に共通するのが、このまま女性としての自分が終わってしまうということに対する焦燥感や喪失感だと思います。
今回、依頼していただいたかたは50代で専業主婦をされています。
結婚してから一度も働きに出たことが無いと仰っていましたが、初めてお会いしたときにバリバリ仕事もこなしているような印象のかたでした。
知的で清潔感のある女性です。
予約の際に部屋に入ったら何も言わずに抱きしめてほしいという彼女からのリクエストがありました。
「何も心配しないで大丈夫ですよ」
と声をかけながら抱きしめると涙が溢れてきたのかしばらく顔をあげることが出来なかったようです。
時間にするとそれほど長くなかったと思いますが、彼女のこれまでの結婚生活において今の状況になった原因はなんだったんだろうと想像するには十分すぎるぐらいの時間でした。
いくら考えても僕には答えを出すことが出来ません。
これまでにご相談いただいたかたにも抱きしめさせていただいた時に涙を流されたかたが何人もいらっしゃいます。
ほんの数10分前まで会った事もない男性の胸で泣くほど彼女たちの心は限界に近かったのかもしれません。
彼女の場合は、ご主人の転勤で小さな子供を抱えながら慣れない土地を転々とされてこられたようで、その間はセックスどころの話ではなかったようです。
お子さんも手が離れるぐらいに成長されていて少し落ち着いたところに更年期という女性にとっては最後のハードルが待っていました。
ご主人が浮気をされているわけでも経済的に不安なわけでもなく、他人から見れば幸せな家族にみられることでしょう。
そんな環境なのに性感マッサージを依頼することは、身勝手すぎると思われる女性もいるかもしれません。
贅沢病だと批判されるかもしれません。
一昔前であればそういった理屈も正論だったかもしれませんが、現代では心の問題が直接健康に影響することが増えています。
病気になるだけならまだしも自殺や殺人などを選択する人も心のありかたに問題があると言えるでしょう。
僕に依頼される方たちは誰にも相談出来ない悩みをお持ちのかたばかりです。
性的な接触がなくても話を聞き、手を握り、抱きしめてあげるだけでも心の負担は軽くなります。
そんな簡単なことを目の前のご主人に言えない状況なのです。
長い間の葛藤が知らず知らずのうちに蓄積され、気づいたときには大きな壁のようなものになっていました。
僕は施術の際、彼女達の女性としての自尊心の回復と同時にその壁を壊すための勇気を与えることが出来たらいいなと思っています。
しかし日常のふとしたご主人のなにげない一言に気持ちが一瞬で萎えてしまうことがあるようで、なかなかうまくいかない現状があります。
今回施術をさせていただいた女性もとてもバランスのとれた美しい手の持ち主でした。
ご主人に対して自分の意見を言えないのであればまずは手からでも自分の存在をアピールされてみてはどうかなと思います。
目の前にとても魅力的な女がいるんだということを再認識させることも簡単では無いと思いますが、挑戦してみる価値があると思います。
自分を磨くことは他人のためとかでなく自分の楽しみとして続けられるはずです。
相手を変えるのではなく自分と向き合うことが、対人関係を良好に保つための基本だと思います。