最愛のパートナーのために
50代の独身女性からの依頼でした。
離婚後、付き合ったパートナーを6年前に亡くされ現在はおひとりで生活をされています。
別れたご主人とは今でもやり取りはあるそうですが、これからの自分の人生の中に重要な位置を占めることは100%ないと断言されていました。
ご主人のほうはまだ未練があるようです。
子供が成人するのをきっかけに親に対して離婚をすることを相談されたのですが、あっけないほど簡単に承諾してくれ、逆になぜもっと早く言わなかったのかと慰めてくれたとのことです。親の反対を押し切ってまで結婚したという負い目があり、ご主人の態度にいつも我慢をし耐え忍んでいらっしゃったようです。
親はいつも子供のことを第一に思うものです。感情的になってしまうのも子供のことが心配だということの裏返しなのでしょう。子供のときはそんな親の心を知ろうともしなかったような気がします。彼女は結婚当時の親とのいさかいが原因で長い間苦しみました。
ホテルに到着すると満室だったため少し待合で話をしました。
今の自分について自信が満ち溢れているご様子で、将来の自分を明確に描けているとおっしゃっていました。
僕も人からみると根拠の無い自信を持っていて、自分の人生は自分が描いているので思い通りになると思っているということを彼女に話しました。
施術をいただいた時には、依頼された理由や素性などを一切公表されていなかったのですが、同じような考え方を持つということに安心していただけたのか、次第に全てをお話してくれました。
彼女は離婚後、昔働いていた会社の上司と付き合い始めました。彼は結婚していたので不倫関係となります。
付き合っていた期間は彼が亡くなるまでの3年間でしたが、彼女の人生においてはもっとも重要な時間だったようです。
彼は彼女に対して仕事に対する姿勢や女性としての悦びを教えてくれた人でした。
亡くなった原因は癌です。
彼は仕事が忙しいということで、自分の体よりも仕事を優先していました。彼女は会うごとにどんどん痩せこけていく彼をみているだけでなにも助けることが出来ないということに耐えれなくなり、自ら別れを切り出したようです。
その2ヵ月後に亡くなりました。
好きで好きでしかたないという原因からの別れだったので、亡くなったという事実を知ってから逆に彼女の心の中に大きな存在として今も生き続けています。
仕事で行き詰った時は、部下として一緒に営業回りをしていたときの彼の言動を思い出すことで問題を解決したりして、いつも彼女のそばには彼がいて助けてくれるそうです。
彼は彼女に対して「セックスすると女性はどんどん綺麗になるんだよ」「セックスはしないといけないよ」という言葉を残していました。
その言葉が、今回依頼された大きな要因になっているのかもしれません。それとともにいつまでもいない人を思い続けている自分との決別を図ろうとしていたのかもしれません。
あくまでも彼の言ったことに従順に従おうとする姿が印象的でした。
彼女はとても魅力的な女性です。知的でお洒落で話す内容も少しも嫌味がなくて、そしてとても素直なかたでした。
施術の最中にはときおり10代の頃のような顔を覗かせることもありました。不思議なことなのですが、施術されている時の表情は皆さん変化されます。
変化しているというのは思い込みで、僕自身が彼女たちの施術中の内面を感じてその表情に映し出しているだけなのかもしれませんが、いつもとても美しく感じます。
興奮度が高まり出すと彼女は突然、亡くなった彼の愛称をつぶやきはじめました。
「〇〇ちゃん」
「〇〇ちゃん」と。
彼女は彼との情事を思い出していたのでしょう。
「愛してる?」
と聞かれたので、
「愛してる」
と答えました。
泣いているご様子でした。
とても感じやすいかたで軽く触れるだけで自ら悦びを迎え入れるすべをご存知だったようで、女性として終わったのではないかという彼女の不安は最初の絶頂を迎えたその時に解消されました。
何度もエクスタシーに達しながら要求がエスカレートし始めたのですが、
僕は、僕のことを見てもらわないとやりませんと言いました。
「〇〇ちゃん」を辞めて僕の名前を呼んでほしいと。
3回に1度ぐらいは「〇〇ちゃん」という言葉が出てしまいましたが、
少しだけ彼女の中に別の男性のイメージが入ったような気がします。
彼女の人生の中から彼のことを消す必要はないと思います。
ただ、
彼女が生きている間は、彼との記憶を糧にすることは大切ですが、障害となることは避けなければいけません。
それは亡くなられた彼が一番望んでいることだと思うからです。