官能小説の中のマッサージ

施術前にはシャワーを交互に浴びます。

 

僕が部屋に戻るとバスローブに着替えた彼女がベッドの上でうれしそうに飛び跳ねていました。

 

彼女は30代後半の専業主婦で、3人のお子さんがいらっしゃいます。

 

夫婦間のセックスは、ご主人主導で欲求解消の為に奥さんがそれに応える形で続いています。

 

1階がご両親で2階に自分達家族が住む2世帯住宅にお住まいで、

 

普段はふとんで生活されているということで、ホテルのベッドに興奮して飛び跳ねていらっしゃいました。

 

 

トランポリン競技以外で成人女性が飛び跳ねれているところを見たことがなかったので、

 

その光景を見た瞬間にどういう言葉をかければいいのかわかりませんでした。

 

 

彼女のその無邪気な笑顔がとても印象的でした。

 

 

初めてメールをいただいたのは、僕の誕生日です。

 

 

「お誕生日おめでとうございます!」という言葉から

 

自分の現在の状況と僕が発信している内容の感想など、

 

かなりの長文で送ってこられました。

 

最後に機会があれば施術を受けてみたいという言葉で締めくくられていたのですが、

 

今回の東京出張のタイミングと重なったため、予約していただくこととなりました。

 

 

「前田先生」と僕のことを呼ばれます。

 

 

先生というのは僕には似合わないので、変更して欲しいと言ったのですが、

 

結局、彼女にとって一番しっくりくる呼び方を優先した結果そのままとなりました。

 

 

真面目な中学生がそのまま大人になったといった感じで、とても30代後半に見えないですし、

 

子供が3人もいると思えません。

 

それにあの飛び跳ね方を見てしまったので、

 

普段の施術とはまた違った緊張感を持ってしまいました。

 

 

施術が終わるとほとんどの女性はその余韻を楽しむかのようにベッドに横たわったままでいます。

 

僕もその時間も大切にして欲しいので出来るだけ時間をとるようにします。

 

 

彼女は施術が終わったと同時にさっと立ち上がってシャワーへと向かわれました。

 

施術中に何度も言葉を発していらっしゃったのですが、

 

その替わりように少し戸惑ってしまいました。

 

 

すぐに切り替えが出来る女性もいるんだなと思っていたのですが、

 

その夜のメールには、帰りの電車の中で自分で理解できないものがあふれ出してきて、

 

座席を汚さないようにずっと立っていたことや電車の振動がまた体の中を刺激して

 

どうしていいのかわからなかったということが書かれていました。

 

 

最後に僕が帰る日にもう一度施術の予約が可能かどうかという質問がありました。

 

彼女にとって僕は2度会う価値があるのかどうかが、正直なところ疑問でした。

 

 

施術を初めてさせていただく時に思うことがあります。

 

風俗に限らず通常の商品やサービスを販売する上で一番大切なことはリピートしてもらうことです。

 

ただ僕のやっていることは、悩みをなるべく早期に解決してもらうことだと考えています。

 

 

あるお客さんと一度そんな風な話をしたこともあります。

 

彼女もたしかにそう思っているようですが、今でもリピートしていただいています。

 

 

これには明確な答えを見つけることが難しく、

 

こちらのサービス内容として一定の基準を設ける必要があるのかなとも思っています。

 

 

反面。

 

そんなに難しく考える必要などなくて、

 

ただ求められればそれに精一杯応えることに集中すればいいと

 

考える自分もいます。

 

 

彼女からの2度目の予約には、そういったことを通り越して

 

もう一度あの無邪気な笑顔を見たいという気持ちが優先しました。

 

 

待ち合わせ場所に先についていた彼女を見た瞬間、

 

高校時代に初めて付き合った彼女と待ち合わせした時のことを思い出しました。

 

 

今回はベッドで飛び跳ねることはなかったのですが、

 

施術に体がついていけなくなってしまったのか、

 

途中で猫のように体を離し、そこで幼稚園児のように泣き出しました。

 

 

「え〜〜ん」

 

「え〜〜ん」

 

 

といった感じです。

 

 

痛くて泣いたのか

 

怖くて泣いたのか

 

 

訳がわからなかったのでいろいろ聞いてみたのですが、

 

一番近かったのは、

 

「ジェットコースターに乗った後に泣き出すこと」

 

だったみたいです。

 

 

初めての体験に驚きが予想をはるかに上回ったのかもしれません。

 

 

僕にとっては、彼女からのメールもベッドで飛び跳ねることも

 

子供のように泣いた姿も全て予想外の出来事でした。

 

 

彼女との出会いは、僕になにを気付かせようとしたのだろう。

 

 

あれからずっと考えています。

 

 

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